アメリカでは大学院課程に在籍する学生は約185万人で、大学生全体の12.1%を占める。日本の割合7.4%と比較すると、大学院への進学率が比較的高いことがわかる。また、年齢層を見ると、30歳以上の学生が49%と多く、社会人が改めて通うケースが多いことがうかがえる。
アメリカの大学院はその形態で見た場合、学術系大学院とプロフェッショナルスクールとに分けられる。この学術系大学院は、アカデミックな学問研究や教育に重点を置いた大学院で、人文科学、社会科学、自然科学の全域にわたって、さまざまな専攻分野が設けられている。修士課程(master's program)と博士課程(doctoral program)とがあり、そのうち博士課程まで設けているのは260校ほどだ。そうした大学では、修士課程を終えてから最高学府である博士課程に進むプログラムのほか、博士課程の一部に修士課程が設けられており、この場合は修士課程を経ずに直接博士課程に入学することもできる。
専攻分野の種類は非常に豊富で細分化されている。従来の学問分野に捕われず複数の分野にまたがって学ぶ学際的なプログラムや、提携校の大学院の単位も認めるプログラムなど、時代のニーズに応じて柔軟性に富む。
修士課程は一般に1、2年。インターンシップやプロジェクトワークがカリキュラムに組まれている場合もある。修士号取得には科目履修(コースワーク)が最低条件で、一定の単位数と成績を満たす必要がある。プログラムによっては修士論文の執筆、修士プロジェクトなどが必要な場合もあり、口頭試問が課せられることも多い。コースワークのみの場合は、科目の履修数が多めで通常筆記による修了試験が課せられる。
博士課程は、一般的に5~8年。教育、人文科学、社会科学の分野は比較的長くかかる傾向がある。通常2~4年のコースワークの後、博士号の候補生になるための試験を受ける。それにパスして初めて博士論文執筆のための研究に取り掛かり、論文提出後に口頭試験を受けて、合格すると博士号取得となる。博士課程では、途中で断念する人も多く、実際に学位を取得するのは博士号候補生となった学生の約半数と言われている。
また、学部課程と異なる専攻でも学生を受け入れているが、数年の実務経験が必要な場合も。
プロフェッショナルスクールは、高度な専門職に就く際に必要となる実践的な知識や技術を養成する専門職系大学院だ。プロフェッショナルスクールでの教育は、共通する実用的な知識の習得とその応用を重視する傾向が強く、学生は共通科目の多いカリキュラムを履修する。その点が最終的に自分自身の研究結果をまとめて学位を取得する、学習・研究スタイルが一般的な学術系大学院との大きな違いだ。専門性を身に付けることが高く評価されているアメリカでは、このプロフェッショナル教育がよく発達しており、教育現場や企業などでも重要な位置を占めている。
代表的な専門分野には、経営学、法学、医学、建築学、工学、教育学、公衆衛生学、国際関係学、ジャーナリズム、公共政策学などがある。一部の分野を除けば、そのほとんどは修士課程で修了し、博士課程に進むプログラムは限られる。履修期間はプログラムにより1~3年。修士号取得には規定のコースワークが課せられており、修士論文は要求されることは少ない。また、プロフェッショナルスクールには専門分野ごとに呼び名がある。経営学を学ぶビジネススクール、法学を学ぶロースクール、医学を学ぶメディカルスクールなどが日本でもよく知られている。
ビジネススクールは20世紀初頭のアメリカで、資本主義経済の急激な発展に伴い実践的な経営教育が必要であるとのことから誕生した。以来ビジネスエリートへの登竜門として発展し、現在AACSB*の認定を受けているビジネススクールは全米に350校ほどある。取得できる代表的な学位がMBA(Master of Business Administration)だ。経営管理学の理論と実践を学び、優れた管理職の養成を目指している。MBA以外の学位には、国際ビジネスについて学ぶ MIM(Master of International Management)、数字を駆使する専門分野のMSA(Master of Science in Accounting)、MSF(Master of Science in Finance)などがある。プログラムの履修期間は1、2年。学部課程の専攻は通常問われない。
ロースクールは法律家の養成を目的とした学校で、ABA**が認定しているもので188校ある。アメリカでは、本格的な法律教育は学部課程ではなく大学院レベルで行なわれる。そのため、ロースクールでは、法学教育を受けたことのない学生を対象としたJD(Juris Doctor)プログラムが中心。この他、法学修士号を取得できるLLM(Master of Law)、MCL(Master of Comparative Law)、法学博士号を取得できるSJD(Doctor of Juridical Science)などのプログラムがある。JDプログラムは基本的に法律のジェネラリストを養成するもので、履修期間は通常3年。このプログラムを修了後、LLMなどのプログラムに進める。こちらは履修期間は通常1年で、税法、国際法、環境法など特定分野の法学を学ぶ。日本人の場合、すでに法職に就いている人がLLMプログラムでさらに専門性を究めるケースが多い。なお、日本で弁護士になるには、日本の国家資格を取得する必要がある。
プロフェッショナルスクールへの入学に際しては、同分野での実務経験が要求されることが多い。授業の理解度や卒業後の進路を考えると、やはり社会経験はあったほうがいいだろう。
*AACSB:American Assembly of Collegiate Schools of Business
**ABA:American Bar Association
カナダの大学院生は、教授との共同研究のパートナーと見なされている。大学院生の持つ知的好奇心や独創的な思考は、大学の研究活動を活性化させ、知識の発展に貢献し、それぞれが属する研究科の名声を高めることに一役買っている。
北米の優秀大学ランキングを評価するThe Gourman Reportによれば、カナダからはUniversity of Toronto、McGill University、University of British Columbia、McMaster Universityの実に4校がベスト10にランクされているが、これも研究者と大学院生が、パートナーとして触発し合いながら研究を進めていく共同研究スタイルのたまものだと言えるだろう。
留学先となる大学院を決める際には、自分の学びたい分野に強いか、自分の目的に合ったプログラムや履修科目が提供されているかといったことに加え、研究施設の充実度、ほかの研究機関や関連団体との関係の深さなど、いくつか選ぶポイントがある。中でも、教授陣の顔ぶれを把握しておくことは大切だ。教授によって研究スタイルが大きく異なるので、各大学院にどのような教授がいてどんな研究をしているのかを知り、自分に適した留学先を選ぶ必要がある。国際的な学会や協会のウェブサイトから大学院や研究者の情報を入手するか、同じ専門分野の研究を行っている研究者に相談するなどの方法で、最新の情報を入手しよう。
大学院は通常、修士課程と博士課程の2つの課程に分かれており、修士課程の位置づけは大学院ごとに異なる。修士課程で修士号を、博士課程で博士号を授与するパターン、博士課程の途中で修士号を授与するパターンや、修士課程のみ設置されているパターンなどさまざまだ。
カナダの大学院で取得できる学位には、大まかに分けるとコースワーク制の修士号、研究志向の修士号、博士号の3種類がある。コースワーク制の修士課程は、基本的に特定のコースを履修することで修士号を取得するが、場合によっては専門的なインターンシップが含まれることもある。履修にかかる期間は1年間で、通常は修了後に博士課程へは進めない。
研究志向の修士課程では、専攻分野のコース履修と学位論文作成の両方が要求され、履修には2年間が必要。博士課程の前段階となるのはこのタイプの修士課程だ。
博士課程は、まず修士課程を修了、または定められた科目を履修して、専門分野の知識を深めることから始まる。学位取得には独自の研究を博士論文(dissertation)にまとめて提出しなくてはならないが、論文作成のための主要研究に先立って、研究計画を立案、論証し、広域な分野を網羅した試験を受けることが求められる。試験は通常、2年目の終了時に行われ、この試験にパスして初めて、学生は博士号論文作成を認められた博士号候補(doctorate candidate)となることができる。博士号取得までの流れは専攻分野によってやや異なり、人文・社会科学系の大学院では、原則として学生独自の研究とその論文の提出が要求され、自然科学・工学系では、指導教授の研究プロジェクトにほかの院生とともに加わり、そこでの研究に基づいて論文を書くケースが多い。いずれの場合も、研究レベルが非常に高度なものになるため、学位取得までには修士号取得後、最低でも3年はかかるといわれている。大学院では、学生は教授から一方的に知識を吸収するのではなく、自らもほかの学生や教授に知的刺激を与え、貢献することが求められるため、学生生活はかなりハードであることを覚悟しておこう。
学位取得後の進路については、修士号は就職や昇進などキャリア直結の性格が強い。もしくは、博士課程へと進む道もある。博士号取得者は、一般に教育職や研究職を志す人が多いが、研究経験で培った専門性と管理能力を生かして民間企業に就職する人もいる。
イギリスの大学院では、一般的に細分化された学習・研究目的ごとに履修プログラムが用意されている。その数は1万5,000以上もあり、開講当初から、特定の専門領域について深く学んでいくことができる。
イギリスが強いといわれる分野は、開発学、環境学、政治学、国際学、言語学、英語教授法などで、経営管理学、生物学、アート&デザインなどの分野も注目を集めている。取得可能な学位は修士号(master's degree)および博士号(doctorate)。この他、大学院レベルの公的資格として、イギリス国内はもとよりヨーロッパでも認知度の高いpostgraduate diploma/ certificateを取得するためのプログラムもある。
大学院での勉強には2つの方法がある。ひとつは大学院が設定したカリキュラムに従って学ぶ講義主体のもので、一般にtaught programmeなどと呼ばれる。もうひとつは、指導教授のもとで独自に研究を進め、研究成果を最終的に論文にまとめて提出する方法でresearch programmeと呼ばれる。後者は、その分野での専門知識や研究経験が十分ある人が対象となる。
Taught programmeでは、修士号およびpostgraduate diploma/certificateの取得が可能。履修期間は9カ月から2年。1年のものが多く、日本やアメリカに比べて短期間で修士号を取得できる点は、イギリスの大学院教育の大きな特徴となっている。
Research programmeで取得できる学位は、修士号および博士号で、修士号は約2年、博士号は5年というのが、最短履修期間のめやすだ。最近は、講義の比重を大きくした博士課程も登場している。
Postgraduate diploma/certificateは、職業的かつ実践的な色合いが強い。修士課程への入学条件を満たしていない学生が、このプログラムで学んで基礎固めをするケースもよく見られる。また、数は少ないものの、大学院進学のための予備コースを設けている大学もある。
アイルランドには4校の総合大学がある。最も歴史の古い大学は、The University of Dublin, Trinity Collegeで、創立は16世紀末にまでさかのぼる。The National University of Ireland(NUI)は、アイルランドの大学の標準モデルとして1908年に設立されたもの。近年、NUIを構成する4つのカレッジが大学と同格に位置づけられるようになったことから、大学数は7校と考えることもできる。 いずれの大学も大学院課程を設置し、ビジネス、法学、自然科学、社会科学、コンピューター関連、語学、医学など幅広い教育・研究分野をカバーしている。留学生には、ケルト学、アイルランド文学、アイルランド史など、この国ならではといえる専攻分野の注目度が高い。
大学院課程では、修士号(master's degree)と博士号(doctorate)といった学位を取得できる。ただし、博士課程を設けていない大学もある。この他、学士号と修士号の中間レベルに位置づけられる実践的な資格としてpostgraduate diploma(higher diploma)、postgraduate certificateの取得も可能だ。
修士課程には、学校側が決めたコースに従って学ぶ方法と、指導教授のもとで独自に研究を進める方法の、2つのタイプがある。当該分野の知識をあまりもっていない人には前者の学習方法が向いている。履修期間は1~2年が中心だが、コースによっては4年ほどかかるものもある。
博士課程は独自の研究によるものが中心で、博士号取得までには最低5年はかかる。一部の大学では、講義主体の博士号プログラムも提供している。
アイルランドの大学では一般に、学部課程よりも大学院のほうが留学生への門戸を大きく開いているといわれる。また、正規の学位取得プログラム以外に、occasional student、visiting studentといった、いわゆる聴講生として大学院に受け入れてもらう方法もある。
オーストラリアでは、ほとんどの大学が大学院課程を設置している。学部課程から専門的な教育を行うだけあり、大学院の専門性は極めて高い。アメリカや日本に比べて大学の数は少ないものの、専攻の種類は多岐にわたっている。
世界的に評価が高い専攻分野としては、豊かな自然環境を背景にした海洋学、環境学、動物・植物学、また、文化・地理的な位置づけからアジア研究、日本語をはじめとする言語学、教育学、そしてスポーツ科学などがある。さらに、環太平洋地域におけるマネジメント・プログラムやワイン研究なども、オーストラリアならではの分野といえるだろう。
大学院課程では、修士号(master's degree)または博士号(doctorate)の学位取得プログラムが基本となる。修士号を取得するためのプログラムには2種類あり、講義や試験、セミナーを通じて単位を取得するコースワーク主体のタイプ(履修期間約1年半)と、指導教授のもとで独自に研究を進めて論文をまとめる、リサーチワーク主体のもの(同約2年)とに2分される。
博士課程は基本的にリサーチワークとなり、学位取得まで一般的に3年を要する。コースワーク主体の博士号プログラムもあるが、その数は少ない。
大学院では、公的な資格としてgraduate/postgraduate diploma(履修期間は通常1年)、graduate certificate(同半年)などの取得プログラムも提供されている。これらの資格は、学士号と修士号のあいだに位置づけられるもので、学部課程よりももう一歩踏み込んで、専門分野を深く学んでいこうというもの。比較的短期で修了できるだけでなく、基本的に学部課程のときの専攻に関係なく分野を選べることもあり、修士課程へのステップとしての利用価値は高い。また、公的資格として社会的認知度も高く、内容も実践的なことから、キャリアアップを図りたい社会人にも適している。
ニュージーランド国内にある8つの総合大学は、すべて学部課程の上位に大学院課程を設けており、修士号(master's degree)、博士号(doctorate)、大学院レベルの資格(postgraduate diploma)を取得できる。これら8校は、もともとUniversity of New Zealandを構成する単科大学であり、その歴史的背景から、現在も大学ごとに強い分野がはっきりと分かれている。たとえば、ニュージーランド最大規模のThe University of Aucklandは建築学や医学、首都ウエリントンにあるVictoria University of Wellingtonは行政学や法学に力を注いでいる。
修士課程の履修期間は、通常1~2年。指導教授のもとで研究を行い、修士論文を仕上げるリサーチワークのプログラムが主流になっており、最終的に論文審査にパスしないと修士号は取得できない。最近では、講義を中心として筆記試験を受けるコースワークのプログラムが増えつつある。この場合はカリキュラムに沿った科目を履修し、セミナーや講義に出席してレポートを提出しながら学習することなどが学位取得の条件となる。
博士課程では独自に専門分野の研究を行い、博士論文を作成する。学位を取得するには、論文審査の他、口頭試問などに合格することなどが条件となる。博士号の取得には最低3年はかかる。
postgraduate diplomaの取得を目指すプログラムは、修士課程に入る前の準備として専門分野の内容を1年かけて履修するもの。ニュージーランドとは異なる教育システム下で学んできた留学生にとって、修士課程に進む前に、専攻の知識を深めるためにもこのプログラムを履修することは非常に有効といえる。入学に当たっては学士号を取得していることが条件になるが、希望する専攻と学士号の専攻が異なっていても入学できる場合が多い。そのため、学部課程と別の専攻を大学院で学びたい人にも利用価値が高い。